倒産防止共済 令和6年10月からの対応 どうする!?
まず、経営セーフティ共済(通称 倒産防)のしくみやメリットから
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは、取引先が倒産し債権を
回収できなくなったときなどに共済金を借り入れられる制度です。
無担保・無保証で、「回収困難となった売掛金債権等の額」または
「掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ないほうの金額まで
借り入れが可能です。これが本来の目的です。
ですが、経営セーフティ共済は本来の目的を離れて節税対策に使われてきました。
なぜなら、掛金を全額損金(または経費)に算入することができるからです。
掛金は月額5,000円〜20万円で設定でき、年240万円まで損金に計上できます。
また、次年度の掛金を一括(1年分前納)で納めることもできるため、
1年に最大480万円まで損金にすることが可能です(ただし積立総額の上限は800万円)。
そのため、いつもより利益がたくさん出る年に多く掛金を支払うことで
節税につながります。
しかも、掛金を40か月(3年4か月)以上納めていれば、解約時に掛金全額が戻ります。
解約金は全額収益として計上しなければなりませんが、解約した年に退職金や修繕費などの
支出を当て込むことによって、解約金への課税を抑制するということが行われてきました。
さらに、一度解約しても再度加入することができます。
この制度を利用した節税対策をうたったYouTubeなども派手に展開され、税務署の目についてしまいました。
制度の本来の目的とは違うという理由で、
2024年度の税制改正により制限がかけられることになりました。
で、今年10月から経営セーフティ共済はどう変わるか?ですが、
2024年10月1日以降に共済を解約すると、その後2年間は再度加入しても、
掛金の経費計上(損金算入)ができなくなります。
すでに加入している人はどうすればいいのでしょうか?
考えてみましょう。
***近い将来に使い道が決まっているかどうか***
解約金の使い道とタイミングが近い将来決まっている方は
慌てずにそのままかけ続けていただいてよいと思います。
そうでない方については、40カ月をすでに経過しているのであれば
2024年9月30日までに一度解約しておき、再度加入するのがいいかもしれません。
40か月を過ぎるのが10月1日以降になる場合は、
9月30日までに解約すると解約金は掛金総額を下回ります。
しかし、返戻率は加入期間により変わりますから、
これまでに節税できた金額と解約により戻ってくる金額との兼ね合いを考え、
節税額+解約金≧掛金総額なら
9月30日までに一度解約しておくというのも考え方ではあります。
ですが、いずれの場合も、解約金は収入ですからそのまま課税されたのでは、
掛金を支払ったときの節税額を解約した時に支払うだけのことになります。
9月30日までに解約した場合は同じ事業年度内に再度共済に加入して
掛金を損金計上することや修繕計画の実行、
少額資産の購入や特別償却の検討などにより課税インパクトを弱め、
せっかくの解約金を有効活用することを考えていただきたいと思います。
***これから加入する人はどうすればいい?***
初めての加入はいつしてもいいと思いますし、
同一事業年度内に月払いから年払いに変更することで
掛金を最大480万支払えることには変わりありません。
今回の改正では、10月1日以降に解約をした場合の再加入をどうするかが問題です。
解約後2年間は加入をしてもその掛金が損金になりません。
ですから2年間は加入を控えるということも考えられますが、
解約時に40か月を過ぎていないと解約金が掛金総額を下回りますから、
解約後2年間は月額5000円の最低掛金で加入しておき、
その後から掛金を増額することで、40か月に達する期間を早めに確保する
というのもよいかもしれません。
今回の改正について思うことですが
倒産防止共済は本来の目的と異なる利用がなされていたことも事実ですが、
保険会社が作った商品でもなく、そもそも国が作った制度です。
改正されるとは思っていませんでした。
倒産防止共済は得意先の倒産に備えるばかりでなく、
契約者貸付や赤字の事業年度の欠損填補に使われたりと
中小企業を助けてきた側面がたくさんあります。
しょせん1社800万までしか積み立てることができない制度です。
業績の良いときにためたお金を大切な局面で使うことが
そんなに悪いことなのだろうかと思われてなりません。
不動産賃貸業とインボイス
問題は、地主さん・家主さんだと思います。
家賃や駐車場代の場合は、毎月請求書を発行しませんから、賃貸契約書に
課税事業者番号・課税本体価額・消費税率・消費税額を明記してもらうことで
インボイスとなります。
勝手な想像ですが、地主さん家主さんは免税事業者で高齢の方が多いように
思います。
これからは不動産管理会社の方はその対応に迫られると思います。
地主さん家主さんは「消費税なんかもらっとらん!」というでしょうし、店子は
(ここに居続ける限りは永久に)「家賃から消費税が引けなくなるのに値段の改定は
ないのか!?」というでしょう。
ある管理会社の方からは、これからは「インボイス対応物件」とかいう表示もウリに
なるかもね、というお話もでました。「インボイスあり〼」というステッカーを配ろうか、
という笑い話も現実になる日も近いと思います。
マンション管理組合と税金
では、経費はというと、賃貸収入に直接対応する経費があれば当然計上します。例えば、基地局のために使用する電気代などが考えられます。
「ドン・ファン」全財産を田辺市に寄付と遺言、22歳妻がもらえる遺産と相続税は?
税理士ドットコムさんのインタビュー記事を掲載します。
紀州のドン・ファン」こと野崎幸助さんの死亡事件をめぐり、野崎さんが5年前に書いた遺言状で、全財産を居住地の和歌山県田辺市に寄付すると明記していたとの情報が週刊文春で報道された。
週刊文春によると、直筆の文面で、自身と会社の全財産を故郷の田辺市に寄付すると明記されていたという。遺言状は署名と捺印もあり、首都圏の関係先に託されていたという。
野崎さんは今年、22歳の妻と再婚しており、妻は請求すれば遺留分を受け取ることができる。各種報道によると、野崎さんの遺産は10億円という情報から、50億円との情報まであり、定かではない。
野崎さんには妻に加えて、兄弟姉妹もいるが、今回の遺言状が有効とされた場合、妻がどれくらいの遺産を手にすることができるのか。相続税はいくらになるのか。遺産が10億円だとして、相続問題に強い佐原三枝子税理士に試算を依頼した。
●妻は遺産の半分を無税で手に入れることに
「結論から先に申し上げますと、妻は遺産の半分を無税で手に入れることになります。ですので、遺言書が有効で、遺産が10億円とすると、妻はその半分の5億円を相続税の負担なく相続することが可能なのです。
野崎さんについては、個人的なキャラクターに加えて、亡くなり方や家族構成などを理由に様々な憶測が飛んでいます。まして高額の遺産となると、私たちには直接関係のない興味本位のお話になりがちですが、実は野崎さんの遺言書には皆さんに知っておいていただきたい深い含蓄があります」
●遺言を残しておけば、兄弟姉妹からの主張を退けることができる
ーー野崎さんには子どもはおらず、身近な親族は22歳の妻のみだった。ほかに、疎遠となっている兄弟姉妹が複数いたそうだが、兄弟姉妹も相続の対象となるのか。
「私のところでも、子どもはいないがお互いに兄弟姉妹は多いというご夫婦のご相談が最近とても多いです。この場合、『私が死んだら妻(夫)に』という遺言を残しておくようにお勧めしています。
子どもや親がいない方に相続が起きた場合、配偶者の法定相続割合は4分の3、兄弟姉妹は4分の1となっています。遺産がまさにご夫婦で形成した財産であれば、配偶者の兄弟姉妹に4分の1の相続分を主張されるのは心情的に納得がいきませんし、残された配偶者の生活を脅かすことにもなります」
ーー兄弟姉妹は「遺留分」を主張することはできないのか。
「遺留分というのは、遺言によって本来の法定相続割合を侵害された相続人が主張できる遺産の取得割合をいいます。たしかに、野崎さんの遺言では『遺産はすべて田辺市に』となっていますから、妻も兄弟姉妹も遺留分を侵害されています。
しかし、民法1028条には『兄弟姉妹以外の相続人は』遺留分を受けると規定されています。つまり、兄弟姉妹は遺留分を主張することはできないのです。
野崎さんは兄弟姉妹とは疎遠だったということですから、心情的に自分の遺産を相続させる気はなかったのでしょう」
●本来の法定相続分より少ないが、妻は毎月平均70万円を使うことができる
「野崎さんの場合でしたら、妻は遺産の2分の1を遺留分として主張できます。本来の法定相続割合4分の3からみれば少なくなりましたが、争いごとを避けるという意味では正解です。また、半分でも5億円あるのですから、22歳の妻が今後60年生きるとして、毎月平均70万円を使えるのですから、生活保障としても十分でしょう。
妻(夫)の場合、配偶者の税額軽減という相続税法上の制度があり、1億6千万円もしくは法定相続割合のいずれか大きい金額までは相続税が非課税となります。野崎さんの妻が遺留分として5億を主張すると仮定すると、1億6千万円を軽々と超えていますが、法定相続割合7億5千万円(10億の4分の3)には届かないので、この制度によって相続税は非課税となるのです。
野崎さんの妻は結婚して数カ月で未亡人となりましたが、この制度は、まず戸籍上の配偶者であることが条件ですので、婚姻期間は関係ありません。逆に、長年苦労を共にしていても事実婚では適用されないのです」
●国や地方公共団体に遺産を遺贈した場合、相続税が非課税に
ーー野崎さんはなぜ「田辺市に全額を遺贈する」という遺言を残したのか。
「国や地方公共団体に遺産を遺贈した場合、相続税が非課税となります。とはいえ、遺産の中に不動産があった場合、亡くなった人からその遺贈先の団体への譲渡とみなされ、亡くなった人に譲渡所得税がかかる可能性があります。相続税が非課税になっても、譲渡所得税が課税されては大変です。ただし、遺贈先が国や地方公共団体の場合は、この譲渡所得税も非課税となるのです。
野崎さんの中に、生まれ故郷への恩返しと、相続後の手続きや税金をシンプルにしておきたい、という思いがあったような気がしてなりません」
ーー身寄りがなく、野崎さんのように遺産を団体に遺贈したいと考えている場合、注意すべきことはなにか。
「たしかに、国や地方公共団体だけでなく、自分が支援する『よい活動をする団体』に遺贈したいというご要望は多いです。ところが、先方の団体に負担がかかったり、遺言を執行するのに譲渡所得税がかかったり、その団体への遺贈が相続税の非課税に該当しないと税務署から指摘を受けたりすると、良いことをしたつもりなのに遺志が反映されにくいこともあります。このような遺言を書かれる場合は、事前に専門家に相談されることをお勧めします」
●税理士からのアドバイス「法的に有効な遺言を元気なうちに」
「これまで解説してきたことは、野崎さんの遺言が有効であると認められてこそ可能となります。法的な要件を満たしていない、複数の遺言が出てきた、などということが起こると、スタートラインに戻って遺産分割協議を白紙からすることになります。
他の先進国に比べて、日本人は遺言書をあまり残したがらないと聞きます。遺言書と遺書を同一視しているようにも感じもしますが、これは間違いです。
遺言は先立つ者の責任です。遺産の多い少ないにかかわらず、法的に有効な遺言を元気なうちにきちんと作っておきましょう」